「社会福祉法人
ロザリオの聖母会」について

「社会福祉法人ロザリオの聖母会」理事長あいさつ
(2023年度入社式・辞令交付式より)

社会福祉法人ロザリオの聖母会
理事長 石毛敦

 令和5年度入社式・辞令交付式にあたり、ひと言ごあいさつ申し上げます。新入職員の方、入職おめでとうございます、私たち一同、心より歓迎致します。そして、昇進されたみなさん、異動された皆さん、おめでとうございます。
 3年間に及んだコロナ禍で、辞令交付式も最初の2年間は取り止め、昨年度は新入職員に限定しての交付式、今年度は執行役員や施設長など昇進者を含めての辞令交付式となります。コロナ禍もようやく終息を迎えようとしており、こうして無事に開催できたことに感無量の思いです。

 2020年3月から始まる新型コロナの世界的な感染拡大により、この3年間は政府による緊急事態宣言やまん延防止措置をはじめ、Web会議や授業、不要不急の外出制限など、日常生活に大きな制限が課せられ、不便を強いられました。
 3年間と一言で言いますが、中学や高校に入った学生が卒業するまでの期間です。皆さんの中学高校時代を思い出してみれば、いかに長い期間であるかが分かると思います。

 特に10代以下の成長期の子供たちにとっては、その人の人生観や価値観を確定させる非常に大きな影響があったと思います。体も心も急速に成長する時期に、マスクを常に付けて、一定の距離を取らされ、黙食を強いられました。このような状況で友達と接するのは、コミュニケーション能力の発達にとても悪い影響があったようにも感じます。顔全体の表情から、相手の気持ちを汲み取ったり、喜怒哀楽の感情を共有したりという人間として当然の交わりが難しくなったり、心を割って話し合うなどと言ったことが難しくなっているのではないでしょうか。
 
 ロザリオの聖母会でも、2021年夏のデルタ株流行時までは徹底的な感染対策により感染者は2人に抑えられていましたが、感染力の非常に高いオミクロン株の流行により2022年の2月の第6波、2022年7月の第7波、2022年12月からの第8波と、感染者が職員、利用者さん共に増加して、クラスターが発生して、通所系などでは通常業務を休止し、入所系では次々と波及していく利用者さんや職員の感染増に、現場では心の休まる時が無かったと思います。昨年度は職員の感染者142人と職員のおよそ4人に1人が感染しましたし、感染の休止期間の方が、感染拡大期間よりも短いという異常な年度でした。

 行動制限、社会的距離、マスクの着用、ワクチンの積極的なブースター接種など様々な感染対策を徹底して行ってきましたが、感染の拡大期にはどうしても抑えることができずに、世界中で日本中で多くの方が感染して、多くの方がお亡くなりになりました。

 幸いにも本会ではコロナ感染により重症化した方も、お亡くなりになった方も、利用者さん・職員とも居りませんので、不幸中の幸いでしたし、皆さんの3年間の徹底した感染対策の賜物と思っています。
 
 感染対策の怪我の功名として、一部電子決済の導入、給与明細・年末調整や人事考課などの電子システム導入、ウエブ会議や研修の進展、本会でも少しずつDX,ICT化が進行して参りました。

 その反面、感染対策により世界中の物流が滞ったため、生産の停滞によるもの不足、物価の上昇、経済活動の停滞が顕著になって来ました。

 これに拍車をかけるかのように、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻により、アメリカ・西ヨーロッパを中心とするNATOとロシア・中国を中心とするBRICSとの新しい世界の主導権・支配権をめぐる覇権争いが勃発してきました。この2つの大きな国家連合の競争の激化により、エネルギーなどの資源不足により、電気代をはじめ食糧品など物価上昇に歯止めがかからなくなっています。

 昨年度の日本の死者数は158万2000人と過去最多の数字、出生者数は79万人と1892年に統計を取り始めて以来最も少ない数字、これにより人口の自然減数は78万200人とこれもまた過去最高、厚労省のシミュレーションをはるかに上回って少子化の進行と人口減少が同時進行しています。コロナ禍がスパートをかけて、加速化しているように感じます。

 人口減と働く人口の減少によって、今後は消費税などの増税、健康保険料や年金など社会保険料の増加は確定路線であると思います。
 
 江戸時代では農民の税率は四公六民や五公五民で、収入の半分が税金でした。現代日本の国民負担率(税金と社会保険料の合計額)は令和4年度の実績数値で47.9%です。ほぼ50%だと考えると、江戸時代の税率と一致します。つまり、現代の国民が背負う税の負担と、江戸時代の人々が背負っていた税の負担はほとんど同じだということです。
 
 但し、この負担率は1975年には25%、2000年は35%ですから、少子高齢化の進行によって、年々上昇していることが分かります。
 
 負担率が50%を超えると、日常生活に支障が出てきますので、江戸時代ならば百姓一揆がおこるレベルですから、日本の置かれている経済状況がいかに苦しいかが分かると思います。

 感染症の大流行、戦争、物価上昇など経済状況の悪化、現代社会は3つの大きな苦しみの中で喘いでいます。

 失業や貧困化、格差の増大、社会の様々な矛盾やしわ寄せが弱い方々の上に押し寄せています。

 しかし、このとても苦しい状況の切っ掛けとなった新型コロナ感染禍も、この春で終わりを告げようとしております。ウクライナ戦争も終息すれば、本格的に経済活動も正常化すると思います。

 これからは、周囲の状況を注視しながら、徐々に対策を緩めて行き、2019年以前の世界に一日も早く戻れるように、皆さんと話し合いながら準備を進めて行きたいと考えています。

 3年に亘るコロナ戦争の戦後処理と復興の段階です。この3年間で様々なもの犠牲にして、様々なものを失って参りましたから、焼け野原からの復興です。今まで行いたくてもできなかったことを精力的に始めて行きましょう。一部停止ししていたサービス提供の再開、福祉まつりなど各種行事の再開、etc。
 
 感染対策のため一部サービスの縮小や制限を実施せざるを得ない面があり、利用者さん・患者さん、そのご家族の方々には、ご不便とご迷惑を掛けていました。
 
 感染対策のため施設間の交流も最小限に限定していましたので、職員さん同士のコミュニケーションの不足も大きく、世間話をしたり愚痴を言ったりなども出来ず、ストレスや疲労を助長することにも繋がっていました。

 我々の事業は戦前に戸塚文卿神父様が戦前の昭和初期にスタートした当初から、その目的は困窮者、貧困者の方々へのサポートでした。「光の当たりにくい人々と共に」と言う法人理念はその当時からのものです。

 1945年の第二次大戦敗戦の動乱期に本会が社会福祉法人として新たにスタートしたように、コロナ戦争の戦後の新たな再出発の時と思います。
 
 この新しい時代を迎えて、時を同じくして、施設・事業所グループの現場での事業推進の最高責任者となる執行役員制度と施設・事業所をひとまとまりのグループに編成する事業区分制度を新しく設けました。施設事業所間同士の横の繋がりを強化して、協調・連携して組織の力を高めて、迅速な事業運営と利用者さんへのサービスの質と量の強化を図ることが目的です。

 最期に、一言言わせて下さい。

 新入職員の皆さんは今まで長きに亘って、小中高大と学業を修めてきました。
 
 その中心は知識や技術・技能を身に着けることだったと思います。学校での勉強は正しい答え・正解を教わり、それを吸収・定着します。基礎的なことを身に着けることは非常に大切なことです。
みなさんはこれから社会人として、職場でもプライベートでも様々なことを経験していくことと思いますが、学校でのお勉強と違うことは、世の中には正しい答え・正解がないことの方が圧倒的に多いということです。
 
 その時、正しいと思ったことが後で間違いだったと分かったり、その時、失敗して悪手を採ってしまったと思っても後でそれが正解だったりと言うこともよくあることです。
 
 正解の見つからない状況で、少しでも正解に近づくためには、どうすればよいか。
 
 新しい事態や問題が発生して、それを解決するために、いくつかの解決策や仮説を立てます。その策が正しいかを検証するために、情報を入手したり、実際にトライしたりして、最も正しいと考えられる方法を選択・実行し、その過程で誤りや問題点が見つかれば、修正したり、新たな方針を採用したりして、少しでも正解に近づけていく、このプロセスの繰り返しになると思います。

 ここで一番大事なことは、間違いだと分かった際には、即座に修正行動をとることです。プライドが邪魔をして過去の自分の意思決定を肯定するために、また間違ったことの実行に多くの時間と労力を注いだために、間違いが分かっても修正せずに放置すると、傷跡はもっと深くなりますし、いつかは現実と向き合うことになります。

 状況や環境も時々刻々と変化します。一つの考えや方針に拘らずに、柔軟に臨機応変に方策や考え方を変える。このことを心掛けて頂きたいと思います。

 この頭の固さや頑固さが失敗した例は、旧大日本帝国海軍です。ミッドウエー海戦で大敗北を喫したのに、新聞には大勝利と偏向報道をさせ、戦略や戦術を変えずに、次から次へと敗戦を重ねていきます。海軍の上層部がプライドゆえに間違いを認めらなかったことが最大の原因です。国家レベルの間違いだったので、その後は多くの国民を苦しめることになりました。

 また、ロザリオの聖母会の職員の皆さんには、特に若い人たちには、少数でもいいからぜひ同調圧力に屈せずに「とんがって」いる人が出てきて欲しいと思います。

 物事を、ただ他の人がするから、自分もする。他の人が信じているから自分も信じるというのではあまりに寂しい気がします。自分で調べて考えて納得して行うのは構いませんが、他人から強要されたことに従順に従うことが「善いこと」だと思わないでほしいと思います。それが正しく善いことである保証はないのですから。その先には戦前のような全体主義社会が待っているかも知れません。

 アップルの創始者・Steve Jobsの名言"Your time is limited, so do not waste it living someone else's life".
 「あなたの人生の時間は限られているのだから、他人の人生を生きるために無駄な時間を使わないでほしい。」

 ジョブズは同調圧力に身をまかせて生きることを、「他人の人生を生きる」と言い表しています。日本にも「和して同ぜず」という孔子の論語の言葉が有ります。人と仲良く協調するが、安易に同調したり雷同したりすることはないという意味です。

 周りから言われるけど自分の信念に反するからやらない、と決めることのできる人は尊いと思います。いつの時代も世の中を変えるのは安易に同調圧力に屈しない人達でしょう。周りがしているから自分もしなきゃ、と思う人達が何かを達成し、充実した人生を送ることができるでしょうか?

 そもそも、人間は一人一人の、物の見方や考えが違って当然です。分かれていて、分断していて当然です。みんなが同じ考えや行動をしていたら、大きな変化に対応できずに、全体がダメになったり、滅んでしまうでしょう。

 戦前の日本でも、アメリカと戦争行為をするのは自殺行為だと善意で忠告した人たちを、殆どの国民が大新聞の情報操作と同調圧力に負けて、「非国民である」と差別・攻撃・排除した歴史が有ります。
誤解の無い様に断っておきますが、このことはプライベートや人生一般に言えることであって、職場内での業務指示や命令、先輩や上司の指示・指導に従うことは労働法や就業規則上の責務であり、従うことは法的にも当然であることは言うまでもありません。

 日本人の特徴として、一つには、頭が固く一度決めたことの軌道修正が中々できない、二つには、同調圧力に弱く、安易に周りに合わせる、この二点が日本人の最大の欠点と考えています。欠点や短所は裏返せば長所ですから、目的や方法が正しければ、一億人が一丸となって同じ目標に向かって努力して、大成功を収めることもできます。これが戦後復興をして豊かになろうという戦後の高度成長時代の日本で功を奏し、一時はGDP世界第二位の経済大国にまでなりました。
 しかし、価値観が多様化して、グローバル化が進み、標準品の大量生産から、デジタル情報化社会への移行期である現代では、この特徴・長所が現在ではすべて裏目にでて、30年にも及ぶ日本の停滞や衰退につながっていると考えます。

 ですから、結論として、これらをまとめて申し上げますと、①過去の決定に拘らずに、より良い正解を求めて、柔軟に臨機応変に考えを変える、軌道修正をする、②深く考えることなしに同調圧力に屈しない、合わせない。
 これが皆さんにこの機会に一番言いたかったことです。

 この時代の変わり目に、昇進や異動した職員の皆さん、そして今年から我々の仲間に加わり、力を貸してくれる新入職員の皆さんに改めて感謝申し上げます。

 長くなりましたが、皆さんの入職と昇進・異動を心から祝福し、私からの歓迎の挨拶に代えさせて頂きます。

2023年4月1日

法人概要

法人名

社会福祉法人ロザリオの聖母会

所在地

TEL0479-60-0600 FAX0479-60-0660

経営理念

「光のあたりにくい人々とともに歩む」

施設・事業所

事業内容

医療保護施設の海上寮療養所を中核にして、知的障害者・身体障害者・重症心身障害児(者)等の総合的複合施設であり、治療・療育・生活支援・機能訓練・職業訓練・ショートスティ・相談事業・在宅福祉サービスなども実施しています。

代表者名

理事長 石毛 敦

創設

1952年(昭和27年)5月29日

利用者数

4,060名(施設系 398名、通所系 421名、在宅・訪問系 3,241名)

従業員数

 577名(常勤 355名、パート 222名)

定款

(2020年3月31日:現在)

「社会福祉法人ロザリオの聖母会」組織図・役員

組織図

(2019年4月1日:現在)

評議員

役職氏名経歴
評議員 木村明夫 歯科医師
評議員 久米倫男 元会社役員
評議員 越川一幸 元公務員
評議員 佐野善房 弁護士
評議員 松井安俊 元小学校長
評議員 湯川健三 元会社役員
評議員 米本弥榮子 元旭市教育長

(2021年6月17日:現在)

理事・監事

役職氏名経歴
理事長 石毛敦 前専務
理事 白井正和 元施設長
理事 桑島克子 聖母療育園園長
理事 加瀬光一 海上寮療養所院長
理事 廣野正通 社会保険労務士
理事 望月利將 元公務員
監事 加瀬博 元銀行支店長
監事 塙政美 元旭市社会福祉協議会会長

(2021年6月16日:現在)

役員等報酬規程