「社会福祉法人
ロザリオの聖母会」について
「社会福祉法人ロザリオの聖母会」理事長あいさつ
(2024年年頭所感)
社会福祉法人ロザリオの聖母会
理事長 石毛敦
新年明けましておめでとうございます。年頭のご挨拶を申し上げます。
職員の皆さんの日頃のご努力に、そして長い期間に亘り私どもの事業を支えて下さってきた多くの支援者の方々に深く感謝申し上げます。
2020年2月に始まった3年間以上にも亘る新型コロナ禍も、昨年5月からの5類引き下げにより、感染対策が緩和され、本会でも、施設事業所間の交流、利用者さんの諸行事の拡充など、少しづつ従前の日常を取り戻して参りました。
昨年の7月から、法人内でも感染者が続発し、3つの施設でクラスターが発生しました。また夏にも拘わらず学生を中心としてインフルエンザも流行していました。これは以前には考えられなかったこと、この何年かでウイルスが非常に強くなったのか、我々の免疫力が何らかの理由でとても弱くなっているのか、その両方なのか、または別の理由があるのか、分かりませんが、コロナをはじめ感染症と共に生きて行く時代が始まっているのかも知れません。
幸いにも本会ではコロナ感染により重症化した方も、お亡くなりになった方も、利用者さん・職員とも居りませんので、不幸中の幸いでしたし、職員の皆さんの4年間の徹底した感染対策の賜物と思っております。
2022年年頭所感で、我が国の30年間にも亘る経済的凋落の現実や戦争勃発の可能性について、申し上げましたが、2年経過した現在、それがますます顕著になって参りました。
高度経済成長を成し遂げた日本は、1968年に名目GDPで世界2位に躍り出ると、2010年に中国に抜かれるまで長年世界2位の座を守り抜いてきましたが、もはや見る影もありません。
日本経済の停滞ぶりは、ドイツと比較すると如実に表れます。1990年は日本の名目GDPが約3兆2000億ドルでドイツが約1兆6000億ドルだったのに対し、2023年の推計値では日本が約4兆2300億ドルでドイツは約4兆4300億ドル。名目GDP成長率は、日本の約1.32倍に対してドイツが約2.76倍と倍以上の成長率の差となっています。これは日本の労働生産性が低いことを意味しているのではないでしょうか。ではなぜ、労働生産性が低いのか。それは結局、社会の非効率に帰結するのではないでしょうか。非効率の原因は色々と考えられるでしょうが、ゼロリスクを求めて思い切った改革を先送りしたり、データや事実や経験や論理よりも、理想や感情や観念や権威を優先したり、国全体が失敗や再起を受け入れられないシステムだからなど、も該当するように思います。
諸物価高騰・インフレの影響は甚大で、消費支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」は26%を超え40年ぶりの高水準に達しました。円安の進行も甚だしく、円の購買力が著しく落ち込んでます。国際決済銀行(BIS)が昨年秋に発表した昨年8月の円の実質実効為替レート(2020年=100)は73.19とこれまで過去最低だった1970年8月(73.45)を53年ぶりに下回った過去最低となったようです。
国民負担率(租税と社会保険料合計)が50%を超えて生活を圧迫し、30年も所得が伸びなくて若い世代の婚姻率も低下しています。1970年の大卒初任給は約4万円、それが20年後の1990年には4倍以上になっています。2002年の大卒初任給は約20万円だけど、それが2022年になっても殆ど変わっていません。せめてOECDの平均程度に経済成長していれば、大卒初任給は40万円を超えていたでしょう。いかに日本が成長しない異常な状況なのかが分かると思います。貧困化も先進国の中ではトップクラスで、7000箇所以上もこども食堂ができるほどの状態です。
すでに財務省は潜在的国民負担率が60%を超えたと発表しています。コロナ対策支出300兆円の特例国債償還も始まるし、防衛費は大幅に増大されるでしょうから、大増税も目前と思います。
我が国は、海外のように犯罪が多いわけでもなく、薬物中毒者が多いわけでもなく、教育水準が低いわけでもなく、怠惰ではなく勤勉で、労働時間も長く、スキルも高く、温和で真面目な国民性です。このような好条件に恵まれているにも関わらず、30年間にも亘り経済的に凋落したのは、世界的にも例を見ない政策のミスのように思われます。
少子高齢化が日本の衰退の主原因ですが、少子化対策に30年前から積極的に大胆に着手していたら、今のような惨状には陥ってなかったようにも感じます。ひとたび出生数が減少を始めると、経済・社会条件の根本的な改革がない限り少子化は加速度的に進行します。
この30年間、日本は付加価値を生む領域、外貨を稼げる領域、少子化対策、教育・研究等への資金配分を増やさず、ひたすら借金を増やしてきました。
戦後80年間にもわたる様々な利権に制約されて、思い切った政策がとれなかったのかも知れません。過去の大きな栄光にしがみついて、眼前の危機を軽視し過ぎていたのかも知れません。
「和を以て貴しとなす」、これは、争いのない安定した社会を実現するための非常に素晴らしい信条、日本民族の知恵と思います。ですが、多数派の意見が間違っているにも拘らず、真実や事実を無視して、ただ単に争いを避けることだけを目的に、議論することなしに、多数派の間違った意見が一方的に正しいとされてしまう危険性も大きいと思います。このことは特に政治や経済や科学の世界ではあってはならないことと考えます。間違った際には実害が大きいですし、場合によっては取り返しがつかないことにも成り兼ねません。
絆、団結、連帯といった抽象的で、行き過ぎた「和」への執着は、例えそれが正しいことであってさえも、「和」を乱すものを悪と捉えて、思考停止にしてしまう大きな弊害もあると思います。
間違ったことが一度、常識や通説や世論となってしまいますと、もうどうにもなりません。動かすことも、変えることもできなくなります。多くの人々はその間違った常識に寄り掛かっていた方が楽だから、そこで思考を停止し、他人の判断をそのまま自分の判断とし、そしてその常識なるものに反対するものは自分達の方から排除して、場合に寄っては村八分にしてしまう。ですから真実を知っている者はみな沈黙する。いったんそうなると、もう良いも悪いも吹き飛んで、その間違った常識という虚構の上に順次に虚構が積み重ねられていき、益々、事実とは乖離してしまいます。これが多くの国民を苦しめた戦前の日本の軍国主義であったと感じます。
「軽々しく物事を信じることは悪、疑問を持つ力を弱め、公正かつ公平に証拠を吟味する力を弱める」ウィリアム・クリフォード
「世界最大の悪は、平凡な人間が行う悪なのです」ハンナ・アーレント
行き過ぎた偏差値偏重の学歴主義も本当に大きな問題と思います。一般的に、優良企業に就職するために受験勉強で暗記や詰め込み学習をすればするほど、自ら考える力は無くなっていくと思います。「一日中、 非常に多くの本を読んでいると、自分の頭で考える能力が次第に失われてゆく」ショーペンハウアー
他人との無味乾燥な競争で、傲慢さ、虚栄心や嫉妬心の強化など、人格形成にも大きな悪影響を及ぼすと感じます。
暗記型の勉強だけで、与えられた模範解答のコピーは得意でも 「前提を問い直す」「正解や通説を疑う」みたいな事は苦手かも知れません。
我が国の政治経済のトップは最高の高学歴者の集団と思いますが、この30年間の日本の低迷や衰退を考えると、過度の学歴主義にも疑問を感じざるを得ません。
「どうして君は他人の報告を信じるばかりで、自分の目で観察し、自分の頭で考えなかったのか」ガリレオ・ガリレイ
結局、日本は朝鮮戦争の特需と、家電・自動車を模倣して低価格・高品質にすることでしか成長できず、かつて世界を席巻していた半導体産業や家電などは台湾や韓国に惨敗して世界で売れる製品はなくなり、新たな仕組みや価値を作ることはできず、ITやソフトではアメリカに惨敗し、アメリカのデジタル植民地になったように思います。過度の成功に驕って自分自身を見失ったことは、日清日露戦争の奇跡的勝利に驕って、二次大戦で大敗した歴史を想起させます。
推計データでは、2040年の生産年齢人口は5,978万人(2022年は 7,469万人)、 高齢者人口は 3,921万人(2022年3,627万人)、 2040年社会保障費190兆円 (2022年134兆円)と少子高齢化の進行は著しく、総人口も労働人口も消費人口も納税人口も就学人口も加速度的に減少しますので、更なるGDPの減少は不可避で、高度経済成長時代には日本国全体が膨らんでいく風船のようでしたが、今後は縮み萎んでいく風船の状態であると思います。
政治の混迷、政策の非効率、経済の衰退、雇用の収縮、レベル7の原発事故など諸々の状況で、今の日本は崩壊前のソビエト連邦に酷似しているように感じます。
私たち、社会福祉法人も我が国の経済的低迷の余波をダイレクトに被り、全国経営協調査によれば、2022年度決算の赤字法人は高齢系で5割、障害系で4割にも達しております。収支差率も2021年度までは2.5%程度ありましたが、2022年度は0.23%と急激に10分の一以下に落ち込みました。コロナ禍による収入減とインフレによる支出増の両面による大きな打撃です。経費節減などの自助努力や積立金取り崩しにも限度があり、このままでは立ち行かなくなるのは必至ですから、今年度のトリプル報酬改定に大いに期待するところです。
「政治」とは民意を集約して法律を作ること、そして国民から税金などで集めたおカネを公平かつ適正に再配分することと思います。さらに言えば「政治」とは会計を精査し、無駄と利権を洗い出し、それによって捻出したおカネを福祉や教育に付け替えることと考えます。
海外に目を向けると、終わりの見えないウクライナ紛争、ハマスとイスラエルの戦闘など、大規模戦争の引き金にも成り兼ねない地域紛争が勃発しています。これらの国際情勢を受けて、我が国の軍事費の増大など、きな臭いムードが漂い始めました。
歴史を振り返ると、戦前の昭和の時代に似てきたと思います。国会は政権与党の実質一党独裁ですし、メディアは統制されていますし「ジャーナリズムとは誰かが報じられたくないことを報じることであり、それ以外のものは広報に過ぎない。」「虚偽が大手を振って歩く時代には、真実を語ることは英雄的行為である。」
(ジョージ・オーウェル)、危険な法案が次々と成立して軍国化が進んでいるように思います。こういうことは気づいた時には遅く、その時には何も言えなくなっているでしょうから、今という時代の状況を理解しておくことが大切と感じます。
「最大の悲劇は、悪人による暴力や圧力ではなく、善人による沈黙である。あなた方は発言だけではなく、無言にも責任を負うべきである。」「反抗的な市民は問題ではない。問題は従順な市民である。世界中の多くの人々が、貧困や飢餓、戦争や残虐行為に直面しても、沈黙して従順であり続けていることです。」
(マルティン・ルーサー・キング・Jr)
「暴政が法になる時には、反抗が義務となる。」(トーマス・ジェファーソン)
「少しの当座の安全を得るために、根本的な自由を投げ出す者は、自由にも安全にも値しない」。(ベンジャミン・フランクリン)
憲法審査会が開催されていますし、場合によっては、今年度にも国民投票が実施されるのではないでしょうか。そうなると100%憲法改正になります。でもなぜ今そこまでして改憲を急いでいるのでしょうか。軍靴の音が聞こえるような気がします。幕末を遥かに超える未曽有の危機であると感じます。
年始早々、辛く厳しい現実を申し上げました。
ですが、現実を直視せずに、夢物語に酔っていては何も変わらず事態は悪化するばかりです。
弱さを認めた時から、強くなります。
間違いを認めた時から、改善が始まります。
愚かさを認めた時から、賢くなり始めます。
厳しい現実を認めた時から、厳しい現実を乗り越えようという意思が生まれます。
本当に先の見通せない困難な時代です。まるで濃い暗闇と激しい暴風雨と荒れ狂う波の中を航海しているかのようです。私たちには結果をコントロールすることはできません。私たちにコントロールできることは、良い結果を得るために、不完全な最善を尽くしたか否かだけです。
遠く微かに浮かび上がる光を探して、経営理念の「光の当たりにくい人々とともに歩む」を羅針盤として創設の原点に立ち戻り、一つひとつ目の前の問題に取り組んで改善し、愚直に誠実に謙虚に慎重に一歩一歩歩んでいきたいと思います。
本年も宜しくお願い申し上げます。
2024年1月4日
法人概要
法人名
社会福祉法人ロザリオの聖母会
( 法人番号 9040005012169 )
所在地
〒289-2513千葉県旭市野中4017
TEL0479-60-0600 FAX0479-60-0660
経営理念
「光のあたりにくい人々とともに歩む」
施設・事業所
事業内容
医療保護施設の海上寮療養所を中核にして、知的障害者・身体障害者・重症心身障害児(者)等の総合的複合施設であり、治療・療育・生活支援・機能訓練・職業訓練・ショートスティ・相談事業・在宅福祉サービスなども実施しています。
代表者名
理事長 石毛 敦
創設
1952年(昭和27年)5月29日
利用者数
4,310名[施設系393名、通所系401名、在宅・訪問系3,516名](2024年3月31日:現在)
従業員数
573名[常勤353名、パート220名](2024年3月31日:現在)
定款
「社会福祉法人ロザリオの聖母会」組織図・役員
組織図
(2024年12月1日:現在)
評議員
役職 | 氏名 | 経歴 |
---|---|---|
評議員 | 木村明夫 | 歯科医師 |
評議員 | 久米倫男 | 元会社役員 |
評議員 | 越川一幸 | 元公務員 |
評議員 | 佐野善房 | 弁護士 |
評議員 | 夛田哲雄 | 元旭市教育長 |
評議員 | 湯川健三 | 元会社役員 |
評議員 | 米本弥榮子 | 元旭市教育長 |
(2024年6月13日:現在)
理事・監事
役職 | 氏名 | 経歴 |
---|---|---|
理事長 | 石毛敦 | 前専務 |
理事 | 白井正和 | 元施設長 |
理事 | 向後文司 | 元銀行役員 |
理事 | 加瀬光一 | 海上寮療養所院長 |
理事 | 廣野正通 | 社会保険労務士 |
理事 | 望月利將 | 元公務員 |
監事 | 加瀬博 | 元銀行支店長 |
監事 | 塙政美 | 元旭市社会福祉協議会会長 |
(2024年11月21日:現在)